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「復興の書店」を読んだ感想

復興の書店

復興の書店

東日本大震災で被災した書店員の方々の、再起の歩みを追ったルポルタージュ。
この本には、驚くべき現実が記されていました。


◆本は生活必需品だった

震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島各県の沿岸部。
被災者は食料も満足に買えず、多くの人たちが街中をひたすら歩いて、スーパーの列に並んでいた。
こんな状況で本屋を再開しても、誰も来ないんじゃないか―――。
多くの書店員は、半信半疑だったという。

しかし、人々は本屋に殺到した。


生活に必要な食料や水を買い求めるためにスーパーに並んだ人たちが、同じようにその足で書店にも並んでいるんですよ。活字にかかわる商売をしている者の一人として、それは胸打たれる光景でした。

開店前から行列ができて、店内はぶつかりながらじゃないと歩けないくらいなんです。人垣の後ろから手を伸ばして雑誌を取ろうとする人たちを見ながら、『人はパンのみにて生きるにあらず』という言葉を文字通り実感する思いでした


ああ、そうか・・・。
本って、生活必需品だったんだ・・・。



私も読書は好きですし、本は大切なものだと思っています。
しかし、震災直後の、食べものさえ十分に得られない状況下で多くの人が本を求めたという事実には、たいへん衝撃を受けました。
しかも、中古車情報誌や「お礼状の書き方」といった実用的な本だけでなく、ありとあらゆるジャンルの本が売れたそうです。
本を読むという行為は、単なる趣味ではなく、日本人の生活そのものと深く関わっているんだということを深く感じました。



◆書店員の方々の思い

この本にはまた、丁寧な取材にもとづいた、多くの書店員さんの「熱い思い」がおさめられています。
ネット書店に押され、ただでさえ経営の厳しい町の本屋さんが、どういった思いで書店の復興に取り組んだのか。

何があっても教科書だけは……

最も情報が必要だった時に、お客様の要望に応えられなかった。それがいまも悔しいんです

店を開いて良かったと思ったのは、マンガを読んだ子供たちが笑ってくれたことでした。子供たちが笑うと、心配していた親たちもやっと安心した表情になるのが私には嬉しかったんです。


瓦礫を見ながら育たないといけない子供たちのために、せめてちゃんとした児童書を揃えたかった、と語る書店員さんの話も紹介されており、その情熱に、胸を打たれます。



そこにあるのが当たり前で、平時にはなかなかその価値に気づきにくいもの。
人にとっての本、町にとっての書店も、そういう見えにくいものの一つだったのかもしれません。
本や書店が、町に暮らす人々にとって大きな支えになっているという事実が、この震災によって浮かび上がった。
本書を読み、そう感じました。