一生を棒に振る覚悟

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少し前、日経新聞のコラムに東京大学名誉教授、浅島誠氏のコラムが掲載されていました。

その中で、「一生を棒に振る覚悟があるなら、やりなさい」という大学院時代の恩師の言葉が紹介されており、読んでいた私もたいへん衝撃を受けました。

あらすじを簡単に書くと以下のとおり。

 

学生時代の浅島氏は「誘導物質」という生物学の分野に興味をもっていた。

大学院時代の恩師が一言。「やる価値はある。一生を棒に振る覚悟があるならやりなさい。」

浅島氏、研究に取り組む決意固める。

10年たっても誘導物質はみつからず。世界中の科学者もあきらめる。

「浅島は無駄なことを続けている」「もうやめたほうがいい」と学会で叩かれる。

40代半ば、探し始めて15年たって、誘導物質「アクチビン」の分離に成功!

 

日本経済新聞 2012.4.27付夕刊 「学びのふるさと」より) 

 

 

すごい人生です。

結果が出ないことを十何年も続けることもすごい。

最終的に結果を出してしまうところもすごい。

そして、大学院時代に、自分の一生を棒に振るかもしれない、無駄な努力になるかもしれないと言われ、それでもなお「やりたい」と決意するところが、またすごいと思いました。

 

 

私は「一生を棒に振る」なんてことは、もっとも避けたい事態だと思っていました。

有意義な人生を送りたい。

一生をふり返ったとき、「無駄な人生だった」と思いたくない。

そんな一心で学業や仕事に励んできました。

ですから、「一生を棒に振る覚悟」というものが、どれほど重い覚悟なのか、ちょっと想像がつきません。

 

 

浅島氏は、結果が出ないときも、

「一生見つからなくても誰か引き継いでくれる大事な仕事だと信じ、中断しようとは思いませんでした」

と述べています。

はるか遠い目標を見据え、自分が道半ばで倒れても、

後に続く者がきっと開拓を進めてくれる――

そういった「大きな流れの中にいる人」にしか、見えない世界なのかもしれません。

一生を棒に振る覚悟。

自分一人の幸せのために生きている人には、まずできない覚悟だと思います。

 

 

学問は日々発展し、科学は日々進歩するもの。

いつのまにか、それが当たり前のことのように思い込んでいました。

しかしその影には、多くの方の、文字通り「人生を懸けた」努力がある。

そのことに改めて気づかせてくれる、素晴らしいコラムでした。