誰もが手軽に出版できる時代

ボイド・モリソン氏は、幼い頃から小説家になるのが夢だったそうです。

IT企業で働くかたわら、こつこつとミステリー小説を書きためていました。

自信作を全米各地の出版社に何度も持ち込みましたが、いつも門前払い。

気に入ってくれる編集者は見つかりませんでした。

モリソン氏は仕方なく電子出版することに・・・。

するとどうでしょう。

3ヶ月もしないうちに口コミで評判が広がり、著作が次々と売れ出しました。

かつて見向きもされなかった出版社からも声がかかり、今や作品は110カ国で販売されています。※1

 

ケンタッキー州在住のジョン・ロック氏も、電子出版で成功した一人です。

不動産運営を手がけるかたわら、空き時間に執筆を続けてきました。

電子出版し、独自の工夫を重ねた結果、著書はどんどん売上を伸ばし、2011年6月、とうとうミリオンセラーを達成。

当時、電子書籍で100万部販売した例は、米国屈指のミステリー作家ジェームズ・パターソン氏など、超有名作家7人のみ。自主出版の作品としては、初めての快挙でした。※2

 

電子書籍の登場により、「誰もが手軽に出版できる時代」が到来しました。

アメリカではすでに、自費出版で様々な名作が生まれています。

きっかけとなったのは米Amazonが提供する便利なサービス。

利用者は簡単な手続きで自分の作品を「電子出版」することができ、自前の販売サイトを持たなくても、作品の配信から課金までをサービス事業者が代行してくれるようになりました。

印税も35%~70%と、通常の紙出版より高い率となっており、作品の値段も著者が設定可能です。

また米Appleも先日、手軽に電子出版できるサービスを発表しており、今後ますます市場が活性化しそうです。

 

AmazonもAppleも、日本ではまだ自主出版サービスを開始していませんが(20121月現在)、同様のサービスを提供する企業は日本にもあります。

paperboy&co.が運営する「パブー」は、簡単な手続きで電子書籍の作成・販売が可能なプラットフォームであり、すでに9,000点以上の作品が公開・販売されております。

ITジャーナリストの佐々木俊尚氏や漫画家のうめ氏など、プロ作家による利用もあり、同サービスは注目を集めています。

日本もすでに、「誰もが手軽に出版できる時代」に突入しているのです。

 

冒頭に紹介した例は、大成功を収めた非常に特殊なケースかもしれません。

面白いのは、モリソン氏もロック氏も、本の権威であり目利きのプロである出版社・編集者に「No」と言われ、出版を断られている点です。

ボイド・モリソン氏は25の出版社に持ち込み、ことごとく断られました。※3

ジョン・ロック氏も高い費用を払って、作品をプロの編集者にみてもらいましたが、受け取ったアドバイスは「これは売れないよ」の一言だけだったそうです。※2

出版社に失格の烙印を押された場合、これまでは高い費用を払って自費出版(紙)をするか、あきらめるかしかありませんでした。

近年、電子出版という選択肢が登場したことで、彼らは小さな負担で作品を直接読者に届けることが可能になり、そして成功を収めることができたのです。

少数精鋭(であるはず)の審査員に落とされても、直接観衆にアピールして、観衆に評価してもらえる仕組みが登場した、とも言えるでしょう。

そういった意味で、電子書籍がもたらした可能性というのは、決して小さなものではないと思っています。

 

※1:NHK「クローズアップ現代」No.2950より

※2:日本経済新聞 電子版 2011年7月21日付

※3:Newsweek日本語版 2010年8月25日号掲載